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自動車事故を起こしてしまったときに、保険会社から車が「全損」と言われた経験があるかもしれません。
「全損」とは、車両の損害の状態とことをあらわしています。
「全損」と聞くと、修理もできないくらいにメチャクチャに壊れてしまった車両を思い浮かべる多いでしょう。しかし、
「そんなに車両が壊れていないのに全損と言われた・・・」
ということもしばしばあります。
それは、保険会社が定義している車両の「全損」状態が、一般的なイメージと乖離していることがあるからです。
この記事では、「全損」とはどういうものなのか。また、「全損」と対をなす「分損」について詳しく解説していきます。
- 「全損」とは車両がどんな状態のときなの?
- 「全損」と「分損」の違いはなに?
と疑問に感じている方はぜひご覧ください。
「全損」と「分損」の定義
保険会社は自動車保険の「全損」と「分損」を定義しています。では、その定義をみていきましょう。
全損とは
全損とは簡単に言うと、修理ができなくなった状態のことを指します。
車両保険に加入している方が保険会社に全損と判断されると、契約時に定めた車両保険金額(車両保険の支払限度額)が保険金として支払われます。
下の3つの状態になったとき、全損と判断されます。
全損の定義
- 車両が修理できない損害を受けた場合
- 修理費用が車両保険金額を超える場合
- 車両が盗難に合ってしまった場合
車両が修理できない場合
多くの方がこの状態になったときを全損とイメージするかもしれません。物理的に修理することができないため全損と判断されます。
修理金額が車両保険金額を超える場合
車両保険金額とは、契約時に定めた車両保険の保険金の限度額です。例えば、車両保険金額が100万円と決めていたら100万円までしか保険が支払われません。
修理金額が車両保険を超える場合とは下のようなことを言います。
修理金額:150万円、車両保険金額:100万円
100万円 - 150万円 = -50万円 → 保険金が100万円しかでないので修理費50万円が保険では支払えない。
この場合、保険では修理することができません。このため、全損と判断されます。
50万円をご自身で負担すれば修理ができるので修理ができると言えなくもないですが、保険金の金額内で修理することができないので全損になります。
車両が盗難に合ってしまった場合
車両が盗難に合った場合は、修理に関係なく全損と判断されます。
しかし、保険会社が定める期間内に車両が戻ってきた場合、盗難でできた傷が車両保険金額を超えていなければ全損の判断は取り消されます。
分損とは
分損とは簡単に言うと修理できる状態のことを言います。全損と分損は対義語の役割を果たしています。
定義に表すと下のようになります。
分損の定義
- 修理ができる損害の場合(ただし、修理金額が車両保険金額を超えないこと)
普段、私たちが保険で修理している状態は分損に当たります。
このように保険会社では、「全損」と「分損」を定義しています。
あなたのお車が全損になる時はどんなとき?
全損は、大きな事故でしかならないと思われている方が多いかもしれません。しかし、案外小さな事故でも起こることがあります。
それは、年式が古い車に乗られている場合です。
車両保険金額は車両の時価額を基に決められているため、毎年の価格は下がっていきます。
毎年の保険証券の更新の際に、車両保険に加入されている方は車両保険金額が毎年下がっていることに気付かれていたでしょうか。
新車購入から10年もすればほとんどの車両が10-30万円程度しか車両保険金額をつけることができません。
つまり、小さな事故でもすぐに全損になってしまう場合があるのです。
年式が古い車に車両保険を加入している方は少ないかもしれませんが、加入している方は全損になる可能性を意識しておくと良いかもしれません。
車両保険における全損
自分の車が全損になった場合は、泣き寝入りするしかないのでしょうか。ここでは、車両保険金額の価格を上げてできるだけ全損の防ぐ特約を紹介したいと思います。
車両新価特約
車両新価特約とは、新車を購入した価格を限度に「事故車を廃車にして再び車両を買うための費用」か、修理をしたければ「修理費用」が支払われる特約になります。
この特約のポイントは、車両保険金額が時価額によらずに、新車の購入価格に合わせることができることです(厳密に言うと、契約車両の新車市場価格)。
このため、車両保険金額が毎年下がることがなく、全損を少しでも防いでくれる特約になります。
ただし、新車を購入した期間近い車両が対象です。付帯できる期間は保険会社ごとに異なりますが、初度登録年月から「25ヶ月」or「61ヶ月」が一般的です。
車両新価特約の詳細は、下の記事で解説しているので参照して下さい。
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車両全損修理時特約
車両全損修理時特約とは、車両保険金額の限度を30〜50万円引き上げる特約になります。
車両保険金額を引き上げるため、全損をできるだけ防ぐことができます。
ただし、この特約も同様に付帯できる期間があります。付帯できる期間は、初度登録年月から25ヶ月超の車両になるので注意が必要です。
車両全損修理時特約の詳細は、下の記事で解説しているので参照して下さい。
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対物責任賠償保険における全損
大きな事故では、相手の車両を全損にしてしまう場合があります。
こちらが100%悪い事故で、相手の車両を全損にしてしまった場合を考えて下さい。
全損になってしまうと修理ができなくなるので、相手が修理を希望していると揉める原因となってしまいます。
そのようにならないためにも、対物賠償責任保険の支払える金額をあげる特約があるので紹介したいと思います。
対物超過修理費用特約
対物超過修理費用特約は、相手の自動車に時価額を超える損害を与えてしまったときに、修理費用を「時価額+50万円」まで増額して補償することができるようする特約です。
時価額を超える損害とは全損のことです。相手の車両に全損が発生したときに、50万円まで修理費を上乗せできる特約になります。
事故では、当事者双方がシビアな状態です。そんなとき、少しでも揉め事をなくすためとても重宝する特約になります。
付帯されていない方は、検討してみて下さい。
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まとめ
この記事のまとめ
- 全損とは下のような状態のことを指します
- 車両が修理できない損害を受けた場合
- 修理費用が車両保険金額を超える場合
- 車両が盗難に合ってしまった場合
- 分損とは下のような状態のことを指します
- 修理ができる損害の場合(ただし、修理金額が車両保険金額を超えないこと)
全損は、自動車保険を勉強していくと切っても切り離せない用語になります。
充実した保険を選ぶときに、この知識が役に立つときがくると思います。
難しい部分もありますが、イメージだけでも良いので着けてみて下さい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。