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対物超過修理費用特約は、対物保険(対物賠償責任保険)では補償できない相手の車の損害を補償する特約になります。
「内容が難しくてよくわからない。。」
「そもそもこの特約は必要なのかな。。」
と対物超過修理費用特約について感じている方も多いかもしれません。
確かに内容が少し複雑な特約ですが、事故の相手と揉めずスムーズに事故を解決するために、とても大切な特約です。
私は損害保険会社に勤務していましたが、この特約を使用するケースがよくありました。
この記事では、そんな対物超過修理費用特約をわかりやすく解説していきます。
- 対物超過修理費用特約の内容を詳しく知りたい方
- 対物超過修理費用特約をどんなときに使用するかを知りたい方
このような方は、ぜひこの記事をご覧ください。
対物超過修理費用特約の補償内容は?
ここでは対物超過修理費用特約について詳しく解説します。
対物超過修理費用特約の補償内容
対物超過修理費用特約は対物賠償責任保険の補償を広げるような特約です。
対物賠償責任保険は事故により相手の車両や建物等の財物に損害を与えてしまったときに補償を行う保険です。
対物賠償責任保険にの詳細については下の記事を参照にして下さい。
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対物超過修理費用特約は、相手の自動車に時価額を超える損害を与えてしまったときに、修理費用を「時価額+50万円」まで増額して補償することができるようする特約です。
そもそも時価額って何?
時価額とは、購入価格から経過年数や使用による消耗を差し引いた金額のことを言います。
時価額は、そのモノの今現在の価値を示しています。
製造された物は、基本的に時が経てば全て価値が下がります。自動車もその例に漏れません。
自動車にも時価額が存在しており、初度登録から時が経過したり、部品が磨耗していれば購入価格より価値が下がります。
例えば、中古車の価格が新車より低いのは、時価額によるものです。
保険会社は自動車の時価額を、オートガイド自動車価格月報(通称:レッドブック)を用いて時価額を判断します。
この時価額は、保険会社の保険金の支払に重要な要素になります。
相手のモノに損害を与えてしまったときは、時価額以上の補償をする必要ない
過去の判例により、
時価額を超える修理費用が発生した場合、時価額以上を補償することができません。
これは、「元の状態に戻すのが損害賠償の考え方なのに、修理できないなんておかしい」と無情に思うかもしれません。
しかし、市場では損害が発生した自動車がこの時価額で売られているわけです。
対物賠償責任保険では、修理ができない損害が発生した場合(全損)は時価額を現金で支払います。
つまり、市場でもう一度、同等の自動車を手に入れるべきと判決では言っているのです。
このような考え方により、時価額を超える修理費用が発生したとき、時価額以上の補償をすることができないのです。
対物超過費用特約は時価額から50万円まで修理費用を増やすことができる特約
これまで見てきた理由より、対物賠償責任保険では修理をするとしても時価額までしか支払われません。
しかし、自動車に愛着があり、どうしても修理を望む方は必ずいます。そのため、揉めるケースがよくありました。
このため、少しでも修理ができるように開発されたのが、対物超過修理費用特約です。
対物超過修理費用特約を付帯することにより、時価額から50万円まで修理費用を増やすことができます。
そうすることで、修理ができなかった自動車が修理できるようになるので、事故の相手とできるだけ揉めることがなく示談をスムーズに行うことができるようになります。
対物超過修理費用特約を使った時の例
対物超過修理費用特約を使った時の例は下のようになります。
<条件>相手の自動車の時価額:80万円、相手の修理金額:100万円、過失:当方が100%悪い
【対物超過修理費用特約に加入していない場合】
時価額:80万円 < 修理金額:100万円
20万円が時価額を超えてしまうので、相手に80万円が現金で支払われます。
【対物超過修理費用特約に加入している場合】
時価額 + 対物超過修理費用特約:80万円 + 50万円 > 修理金額:100万円
100万円が修理費用として支払われる。
このように、対物超過修理費用特約を使った場合は、修理をすることができます。また、過失が相手側にもある場合は、時価額が超えた金額の過失分の支払になります。
しかし、「時価額+50万円」を超えてしまう修理費用が発生してしまうと、当たり前ですが修理をすることができません。
対物超過修理費用特約は実際どれくらい必要なの?
対物超過修理費用特約は実際どれくらい必要になることがあるのでしょうか。
まずは、この特約をよく使うケースを見えていきましょう。
対物超過修理費用特約をよく使うケース
対物超過修理費用特約をよく使うケース
- 大きな事故を起こしてしまった場合
- 相手の自動車が古い場合
- 相手の入庫先がディーラーの場合
大きな事故を起こしてしまった場合
対物超過修理費用特約を使うケースの多くがこの場合になります。大きな事故を起こしてしまえば、損害も大きくなります。
例えば、自動車の速度がどうしても速くなるバイパスや高速道路で事故を起こしてしまうと大きな損害が発生してしまいます。
相手の自動車が古い場合
新車を購入してから10年も経てば、時価額はほとんどの自動車で20-30万円程度になってしまいます。
この場合、大きな事故でなくても修理費用が簡単に時価額を上回ってしまいます。
10年以上使っている自動車は、案外どこにでもあります。たいていは自動車が古いので買い換える方が多いのですが、中には自動車に愛着を持っている方もいます。そのような場合は、対物超過費用特約を使わなくてはなりません。
相手の入庫先がディーラーの場合
ディーラーは副業で保険の代理店も行なっているので保険を熟知しています。相手がディーラーに入庫したときは非常に注意が必要です。
ディーラーの収入源は、新車販売と修理です。ディーラーは時価額を上回り修理ができないとわかれば、すぐに新車を勧めてきます。
しかし、事故の相手が新車を買わないときは、とても高い新品の部品をフルで交換して修理費を上げて収益にします。
こうして意図的に、こちらが対物超過費用特約を使うように仕向けるのです。
こちらに対物超過費用特約がなければ、ディーラーも揉めたくはないので修理費を抑えようとします。しかし、ほとんどの自動車にこの特約は付帯しているので、仕掛けてくるケースがよくあります。
ただし、相手のディーラーと交渉するのは保険会社です。事故を起こしてしまった方はご自身が交渉するわけではないので過度に心配する必要はありません。
対物超過修理費用特約は本当に必要なのか?
対物超過修理費用特約は、法律的には全く必要がありません。時価額を超える修理を相手が求めてきたときは、裁判を起こされても勝訴することができます。
では、なぜ必要なのでしょうか。
その理由は、先述をしている揉めずに示談を行うためです。
もし事故の解決が長期化して、裁判を行なう覚悟があればこの特約はいらないかもしれません。
しかし、解決が長期化するというのはとてつもない心労を抱えることになります。
私が損害保険の社員時代に担当した事故が長期化した契約者の方の多くが辛い思いをしていました。
辛い思いをしないためにも、私は対物超過修理費用特約を付帯することをオススメします。
まとめ
この記事のまとめ
- 対物超過修理費用特約は、相手の自動車の「時価額+50万円」まで修理することができる
- 事故をスムーズに解決するため、対物超過修理費用特約の付帯がオススメ
最後まで読んでいただきありがとうございました。